愛ちゃんの新たな疑問
休み時間、教室の窓際で伊藤先生と話をしていた愛ちゃんは、ふと思いついたように質問しました。
「先生、この前外国人材のこと教えてくれたやん?それでな、テレビで『技能実習制度』っていう言葉聞いたんやけど、なんやろ?」
伊藤先生は少し驚いた表情を浮かべました。
「へぇ、愛ちゃん、そんな難しい言葉を聞いたの?さすがだね。技能実習制度は、外国の人が日本で働きながら技術を学ぶための仕組みなんだよ。」
伊藤先生の説明
「ふーん、働きながら勉強するんや。でも、なんでわざわざ日本に来て勉強せなアカンの?」
愛ちゃんは首をかしげました。伊藤先生は黒板に簡単な図を描きながら説明を始めました。
「いい質問だね。この制度には大きく分けて二つの目的があるんだ。一つは、日本の優れた技術や知識を外国の人に教えること。もう一つは、その技術を使って母国の発展に役立ててもらうことなんだよ。」
「へー!そういうことなんや。日本の技術ってそんなにすごいんか?」
「そうなんだ。例えば、日本の工場での生産技術や、介護の技術なんかは世界でも高く評価されているんだよ。」
制度の仕組み
愛ちゃんは感心した様子で聞いていましたが、また新たな疑問が浮かんだようです。
「でも先生、日本に来て働くんやったら、普通に就職したらええんちゃうの?」
伊藤先生は優しく微笑みました。
「それがね、技能実習制度は就職とは少し違うんだ。期間が決まっていて、最長で5年間。その間に技術を学んで、母国に帰ってその技術を活かすことが期待されているんだよ。」
「5年間か…結構長いなぁ。じゃあ、その間ずっと同じ会社で働くん?」
「基本的にはそうだね。でも、実習生を受け入れる会社も、きちんとした計画を立てて、技術をしっかり教えることが求められているんだ。」
課題と議論
愛ちゃんは少し考え込んだ様子で、また質問しました。
「先生、でもそれって、外国の人にとってええことなん?日本の会社にとっては安い給料で働いてもらえるみたいで得やけど…」
伊藤先生は少し驚いた表情を見せました。
「鋭い指摘だね、愛ちゃん。実はね、この制度についてはいろんな議論があるんだ。本来の目的通りに運用されていない場合もあって、問題になることもあるんだよ。」
「えっ、そうなんや…せっかくの制度なのに、なんでちゃんと運用されへんの?」
制度の課題と対策
「それはね、いくつか理由があるんだ。例えば、実習生の権利が守られていなかったり、適切な技術指導が行われていなかったりすることがあるんだ。でも、政府も企業も、そういった問題を解決しようと努力しているよ。」
「へぇ~、難しい問題やなぁ。」
愛ちゃんは少し複雑な表情を浮かべました。
「そうだね。でも、こういう問題があることを知って、みんなで考えていくことが大切なんだ。」
読者への問いかけ
皆さんの地域や職場で、技能実習生の方と接する機会はありますか?もしあれば、どのような印象を持ちましたか?技能実習制度について、どのように思いますか?
愛ちゃんの決意
「よっしゃ!わたしも大人になったら、外国から来た人がちゃんと技術学べるように、優しく教えたるわ!」
愛ちゃんは元気よく宣言しました。
伊藤先生は嬉しそうに笑顔を見せました。
「それはとてもすばらしい考えだね、愛ちゃん。みんなが協力して、より良い制度にしていくことが大切なんだ。」
「せやで!でも先生、まだようわからんこといっぱいあるわ。また教えてな!」
「もちろん、愛ちゃん。みんなで一緒に学んでいこうね。」
愛ちゃんは満足そうに頷き、次の授業の準備を始めました。伊藤先生は、子供たちが社会問題に興味を持ち、考えようとする姿に、教育者としての喜びを感じずにはいられませんでした。
第3章は「特定技能制度とは?」というテーマで、愛ちゃんと伊藤先生の対話が続きます。お楽しみに!