愛ちゃんの新たな疑問
昼休み、教室で弁当を食べながら、愛ちゃんは伊藤先生に声をかけました。
「先生~、この前教えてくれた技能実習制度のこと、ちょっと調べてみたんや。そしたら『特定技能制度』っていうのも出てきてん。これってなんやろ?」
伊藤先生は愛ちゃんの好奇心に感心した様子で答えました。
「おや、愛ちゃん、よく調べたね。特定技能制度は、技能実習制度とは別の、新しい制度なんだよ。」
伊藤先生の説明
「へぇ~、新しいんか。でも、なんで新しい制度が必要になったん?」
愛ちゃんは口いっぱいにおにぎりを頬張りながら尋ねました。
「それはね、日本の労働力不足がますます深刻になってきたからなんだ。特に、介護や建設、農業といった分野で、人手が足りなくなってきているんだよ。」
伊藤先生は黒板に簡単な図を描きながら説明を続けました。
「特定技能制度は、そういった特定の分野で即戦力として働ける外国人材を受け入れるための制度なんだ。」
制度の仕組み
「即戦力?それってどういうこと?」
愛ちゃんは首をかしげました。
「つまり、すぐに仕事ができるレベルの技能を持っている人たちってことだね。この制度では、特定技能1号と特定技能2号という2つの在留資格があるんだ。」
「1号と2号?なんか難しそう…」
愛ちゃんは少し困った表情を見せました。
「ちょっと複雑だけど、簡単に説明するね。特定技能1号は、基本的な知識と技能を持っている人が対象で、最長5年間日本で働くことができるんだ。特定技能2号は、より高度な技能を持つ人が対象で、在留期間の更新に制限がないんだよ。」
技能実習制度との違い
「へぇ~。でも、前に教えてくれた技能実習制度とどう違うん?」
愛ちゃんの質問に、伊藤先生は嬉しそうな表情を浮かべました。
「いい質問だね。大きな違いは、目的と対象になる人たちかな。技能実習制度は技術を学ぶのが主な目的だけど、特定技能制度は働くことが主な目的なんだ。」
「ふーん、そうなんや。じゃあ、特定技能の人の方が、お給料とかもらえるんかな?」
制度の特徴と課題
「そうだね。特定技能で働く人は、日本人と同じように労働関係の法律で保護されるし、最低賃金以上の給料をもらえるんだよ。」
愛ちゃんは少し考え込んだ様子で、また質問しました。
「でも先生、外国の人がたくさん来るようになったら、日本人の仕事がなくなったりせえへんの?」
伊藤先生は真剣な表情で答えました。
「それは多くの人が心配していることだね。でも、この制度は人手不足が深刻な分野に限定されているんだ。むしろ、外国人材が来ることで、その分野の仕事が維持できて、関連する仕事も増える可能性があるんだよ。」
読者への問いかけ
皆さんの地域や職場で、特定技能制度で来日した方と接する機会はありますか?もしあれば、どのような印象を持ちましたか?特定技能制度について、どのように思いますか?
愛ちゃんの気づき
「なるほど~。難しいけど、大切な問題やな。でも先生、外国の人がたくさん来るってことは、もっといろんな国の文化を知れるチャンスでもあるんちゃう?」
伊藤先生は愛ちゃんの言葉に驚いた様子で目を見開きました。
「その通りだね、愛ちゃん!外国人材の受け入れは、日本の労働力不足を解消するだけじゃなく、文化交流の機会にもなるんだ。そういう視点を持てるのはすごいことだよ。」
愛ちゃんの決意
「よっしゃ!わたし、特定技能で来た人たちともっと仲良くなって、いろんな国のこと教えてもらったるわ!そして、日本のええとこもいっぱい教えたる!」
愛ちゃんは元気よく宣言しました。
伊藤先生は温かい笑顔で答えました。
「それはとてもすばらしい考えだね。そうやって互いの文化を理解し合うことが、共に暮らしやすい社会を作ることにつながるんだ。」
「せやな!わたしにもできることあるかな?」
「もちろんあるよ。例えば、学校に来た外国人の友達に優しく接したり、困っていたら手伝ったりすることから始められるんじゃないかな。」
「わかった!そうしたるわ!」
愛ちゃんは決意に満ちた表情で、次の授業の準備を始めました。伊藤先生は、子供たちの柔軟な発想と前向きな姿勢に、明るい未来を感じずにはいられませんでした。
第4章は「外国人材受け入れのメリット」というテーマで、愛ちゃんと伊藤先生の対話が続きます。お楽しみに!